5・ガンとは何か  

抗ガン因子

 我々の体内には、毎日頻繁に多種多様そして多量の発ガン物質や変異原物質が侵入し、発ガンの危機にさらされている。そして、ガンによる死亡率も年々高まっている。しかしながら、口から入ってくるガン原物質の量から予想される発ガンの可能性に比べるとそれ程ガン罹患は高くない。その理由として、生体の防御機能すなわち、


@ 免疫
A 解毒作用
B 腸内細菌による発ガン物質や変異原物質の不活性化や分解する作用

 この因子が抗ガン因子であり、そしておそらく抗ガン因子の作用が低いとき、発ガンの危険度が高まるものと考えられる。

 

抗ガン物質と抗変異原物質

 抗ガン因子のうちガンの発生、増殖、転移と言った色々な段階に抑制的に作用する因子で同定されたものが抗ガン物質(Decarcinogen)であり、変異原物質の変異性を低下させる物質が抗変異原物質(Demutagen)である。

現在見出された抗ガン物質として、


@ 発ガン物質と結合しその作用をなくす抗酸化剤
A ガン細胞を細胞毒素作用によって死滅させるアクチノマイシンDとアドレマイシン

『これも余談であるがアメリカでの1年目の研究で新しいアクチノマイシンDを私は発見しましたが抗生物質の副作用を考えると私は抗生物質の研究を続ける気になれずガンウイルスの研究へと進んで行きました。懐かしい思い出です』

B ガン細胞の増殖過程に関与するプロテアーゼ(酵素)を不活性化するロイペプチン等のプロテアーゼ阻害剤
C ステロイドホルモン
D ポリI-ポリC Cyclic(サイクリック)AMP  等がある。

抗変異原性物質としては、


@ 野菜中の可溶性蛋白
A 血色素であるヘモグロビンの代謝産物ヘミン等ポリフィリン化合物オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、等がある。

 抗ガン物質と抗変異原物質は化学結合によって、その作用を示す物はOver Lapしている。これらの研究はまだ始まったばかりで、抗ガン、抗変異原の機序については不詳のものが多い。しかし、我々の健康維持の為には制ガン、ガン予防の両面の研究成果が最も望まれる。
 我々は腸内細菌の中に発ガン物質のニトロソアミンを捕捉する菌の存在を見出し、腸内細菌がガンの予防において重要な役割を持つことを発見した。

 

ガンと免疫

 次に生体側から述べてみよう。ガンの発生は加齢(Ageing)と共に増加する。
 その原因としては、


@ 免疫、ホルモン、その他の体液性因子
A 外因性、内因性物質代謝
B 環境因子
C 遺伝

 等が挙げられているが、我々が最も関心を引かれるのは、ガンと免疫の関係である。

 免疫とは体内に侵入した異物を分解、排除したり生体中の老廃物(例えば死んだ血球、顆粒など)の処理を行う事によって、生体の恒常性を維持する機構である。

 ガンと免疫との関係は次のように考えられる。

 ガン細胞は自己の体細胞から生じる。そして、ガン細胞には腫瘍性特異抗原(TSA)が、弱いながら存在する。

 最初に生じたガン細胞が、何故、免疫監視機構から逃れ増殖し続けるのだろうか?

 その機構は明確ではないが、敢えて説明づけると、自己の細胞と発生したばかりのガン細胞は区別できないほどに腫瘍抗原が微弱である為に、免疫監視機構から逃れて増殖する。その上ガンの発生の際、長い発ガン物質の暴露によって、局所的にも全身的にも、免疫機能が低下していると考えられる。

 

担ガン個体には、

@ サプレッサー・Tリンパ球
A サプレッサー・マクロファージ

 が増えていることも知られており、両細胞は免疫機能を抑制する。又、血清中には遮断因子(Blocking Factor)があって、ガンの増殖を促進するとされている。

 ガン細胞自身も免疫抑制物質を産生する。

 このように免疫能抑制状態の中でガン細胞は増殖を続ける。

 

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