4 動脈硬化とは何か  

高脂血症とは何か

 これまで述べたように動脈硬化を引き起こす、第一のリスクファクターは高脂血症でありその要因である。コレステロールや中性脂肪がどのような物であるかと概説した。では、そのコレステロールを始め脂質成分は、血液中にどのような形で存在し高脂血症を引き起こすのであろうか。血液中の脂質としては、前述のようにコレステロールの他に、トリグリセライド(中性脂肪)やリン脂質(レシチン、リゾレシチン、スフィンゴミエリン、セファリン等)遊離脂肪酸等があげられる。これらの脂質は、ほとんど疎水性(水に溶けない性質)であるところから、血液中に存在する為には親水性(水に溶ける性質)の蛋白質が取り囲み、リポ蛋白と言う粒子となって血液中を流れている。リポ蛋白の中央部には、主として疎水性のトリグリセライド、エステル型コレステロールが、また、その表層部分にリン脂質、遊離コレステロールがあり、さらにその周囲を各種の蛋白質が取り巻いている。


 この蛋白質はアポ蛋白と呼ばれ、脂質との結合や担体として重要である。それぞれのリポ蛋白(最低でも7種類)およびアポ蛋白(18種類以上)の種類は多い。しかし、動脈硬化の成り立ちの上から重要なのは低比重リポ蛋白(LDL)と高比重リポ蛋白(HDL)である。
 LDLは、動脈壁などの抹消組織にコレステロールを運搬しているものである。他方、HDLは動脈壁などの組織のコレステロールを除去し肝臓へ運ぶ働きをしている。肝臓に運ばれたコレステロールは、主に胆汁酸に代謝(濾過)されていく。

 その他、動脈硬化の進展に関与しているものにカイロミクロン(CM)、遺残型レムナントや中間型リポ蛋白(IDL)や超低比重リポ蛋白(VLDL)などがあげられる。

 食事由来の脂肪は、腸管から吸収され、カイロミクロンとなって血液中に入る。この分野の研究は日進月歩であり、余りにも専門過ぎるのでこれくらいにしておきたい。

 ただ最後に動脈硬化発症や進展に関与する因子の中には過酸化脂質や血小板あるいはホモシスティン(アミノ酸の一種)のように、必ずしもコレステロールや中性脂肪と関係が深くないと考えられている物もある。動脈硬化発症のメカニズムは、多種多様な要因がからみ、まだまだ明らかになっていないが少なくとも第1番目のリスクファクターが高脂血症であることは間違いなく、高脂血症を正常に戻すことは動脈硬化を予防するにあたって極めて重要なことと考えられる。

 高脂血症には少なくとも6種がありコレステロールだけが高い人、中性脂肪だけが高い人或いは両方とも高い高脂血症患者が存在する。


動脈硬化のリスクファクターとしての高血圧

 高血圧状態が長く続くと、心臓の血液を送り出す働きをしている、左室の細胞が増殖できなくなってくる。その結果、一つ一つの細胞が肥大化して行き、この事によって膜が厚くなり心室肥大を起こし、さらにこの肥大化した細胞の間に、繊維細胞が入り込み心室は厚化していく。その結果、血液の供給が不充分となり冠状動脈が硬化して動脈硬化を起こしさらに細動脈硬化を起こして行く。
 心筋への血液供給不足により狭心症(心筋虚血)も起こり易くなる。さらに腎臓は高血圧による動脈硬化を生じやすい。高血圧状態が長く続くと動脈硬化により腎臓への血液供給が不足し腎硬化症(腎不全)を引き起こす。


高血圧の発症の原因

@食塩の摂りすぎ
A交感神経系の生理的刺激によるカテコールアミンの異常分泌
Bアルドステロン系(ステロイドホルモン系)の調節異常
C遺伝
しかし、高血圧が長期に続かない限りそう危険では無い。
又、全ての病気の病因論はまだまだ明らかにされていない。




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