2・腸内細菌の宿主(ヒト)への影響  

2・腸内細菌の宿主(ヒト)への影響

1 腸内細菌(叢)とは何でしょう

 腸内細菌とは何でしょうか?
 皆さんは細菌と言うとバイ菌例えば、コレラ菌や、チフス菌、最近ではO-157や炭素菌を想像するでしょう。又、乳酸菌を思い出す人もいるでしょう。人間は胎児のときは、無菌状態にありますが、生まれるとすぐに色々な細菌が、胃腸管内に住みつくようになります。これを、腸内細菌と呼びます。

 そしてこの腸内細菌は腸内で、叢(くさむら)のように定着しているので、これを腸内細菌叢(腸内フローラとも云います)と呼んでいます。私達の、胃から始まって肛門にいたる胃腸管には、その内壁をおおい、極めて多数の、腸内細菌が混在して定着しています。

 腸内細菌叢は大きく分けて、胃や腸管に常に住みついている細菌叢(常在性細菌叢)と、定着はしていないがある程度胃腸管に存在している細菌叢の2種類ある。

 人間の胃腸管には約300種類、約100兆個もの腸内細菌が定着している。

 この腸内細菌叢は重量にして約1kgもの重さがある。

 腸内細菌の常在意義はヒトと根源的に深く関わり、ヒトをヒトとして存在せしめているところにあります。腸内細菌叢はまさに、一つの臓器であるが如くの機能があります。そこで私はこの腸内細菌叢を《第三の臓器》として考え、広く社会に提唱しています。そして私の疑問は、これほど多くの細菌が何らかの意味で人間に、関与しているであろうということでした。そして地道な研究の結果、あらゆる人間の臓器に腸内細菌が関与する事が実験でわかってきました。


2 腸内細菌の臓器形態への影響

 以下、実験においては、腸内細菌の影響を知るために、極端な動物としての無菌動物と通常動物とを比較してみる。
 写真は通常ラット(A)(腸内細菌が普通に存在するラット)と無菌ラット(B)の盲腸の写真であるが、無菌ラットの盲腸は著しく大きくなって、その重量は普通のラットの盲腸の数倍から10倍にもなる。このように盲腸が大きくなるのは盲腸内容物中に多量の水分を含むためである。又、無菌ラットの糞便は軟便になっている。
 次の写真は、通常ラット(C)と無菌ラット(D)の回腸粘膜の写真である。粘膜の厚さは無菌ラットの方が薄く、重さも軽く、固有層の発達も不十分となっている。このように腸内細菌は臓器の形態的変化にも強く影響している事がわかった。

写真参照


ラット盲腸写真

A 通常ラットの盲腸
B 無菌ラットの盲腸

ラット回腸写真

C 通常ラットの回腸の切片写真
D 無菌ラットの回腸の切片写真

無菌ラットと通常ラットと比較すると、絨毛は短く、上皮細胞の増殖している腺窩(クリプト)は浅く、固有層には少数の間質細胞しか存在しない。





 

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